タチウオ
スズキ目
タッチ
『秋刀魚』と書いてサンマと読む。このサンマを短刀とするならば、タチウオは堂々の日本刀。『太刀魚』と漢字にすると、妙に横綱感が漂ってくる。シルバーに輝く体表はまさしく名刀の佇まい。実はこのタチウオには鱗がない。体表を保護する鱗がない代わりに、グアニンという色素が体を保護している。ただ、この色素はとても剥がれやすい。「メッキが剥がれるとはお主、名刀どころか偽物だったか」。なんて野暮なことは言わずに、頂いてみてはどうかな。身は柔らかく、まことに美味である。魚屋では切り身で売られることが多いが、まさか1mを超える見事な体格の持ち主だとはとても想像できない。「長過ぎるから切り身になるのさ」。なんて野暮なことは言わずに召し上がれ。
『太刀魚』の別名は『立ち魚』。実際にタチウオは長い背鰭をヒラヒラさせて、ほぼ直立状態で泳ぐのだ。ならば、タチウオとトビウオは、名称的にはかなりの近縁だ。世間では「名は体を表す」とよく言われるが、この両者の名前は「名は動を表す」の際たるものだ。立つから『立ち魚』、飛ぶから『飛び魚』。tachiuoとtobiuo、不思議なものだ。ローマ字表記にしてもよく似ている。(多分に空想を含んでいます。)