イセエビ
エビ目
伊勢エビリアン
イセエビの顔を見るとバルタン星人を思い出す。イセエビを裏返すとエイリアンを思い出す。イセエビは地球外生物ではないかと一瞬疑ってしまうが、食べると大変美味しい海産物であることが瞬時に分かる。漁場は日本各地にあるが、どこで獲れても「伊勢」エビなのだ。イセエビのブランド力はとてつもない。不公平感などどこ吹く風。バルタン星人もエイリアンも吹っ飛ぶ。結婚式のメニューにイセエビの名前を見つけるとちょっと落ち着くのは私だけであろうか。
イセエビは縦1列になって行進する。1週間寝ずに60kmの移動を敢行することもあるらしい。いく先々で仲間が増えていく。遠目には1匹の蛇が巨大化しながらうねって進んでいくようだ。これではトビウオも近づけまい。よく見ると、皆が頭に大袈裟な飾りを付けている。実はこれは触角。やたらに長くて物騒だ。まさかいくさに馳せ参ずる訳でもあるまいが。いえいえ、お飾り付けてお伊勢参りに行くのだそうです。(多分に空想を含んでいます。イセエビは魚類ではありませんが、図鑑には水生生物も含んでいます。)
タラ
タラ目
ソウシタラ
腹いっぱいになることを「たらふく」と言うけれど、漢字で書くと「鱈腹」になる。大食漢で知られる鱈(たら)にちなんでいる。かの有名なフィレオ・フィッシュはタラのフライバーガー。迷った時の私の定番である。英国のフィッシュ&チップスの魚フライもタラ、海外でもタラはポピュラーな食材だ。世界の胃袋を満たすタラであるが、日本ではやはりタラコだ。コンビニのおにぎり、迷った時の定番は、当然タラコである。
タラとトビウオには共通点がある。お互いに魚卵が美味しい。タラの卵がタラコであることは名前を見れば察しが付く。トビコはちょっと難しい。いっそのこと「トビウオコ」にしてしまえば分かりやすいが、何とも語呂が悪い。タラコを辛く味付けしたものが「メンタイコ」。こちらはなんとも語呂が良い。ただ、元々はタラコであることに、皆さんお気付きだろうか。メンタイの卵だと、勘違いをしていないだろうか。余計なお世話でしょうか?(多分に空想を含んでいます。)
シタビラメ
カレイ目
ムニュムニュ
シタビラメと言えばムニエル。元々はフランス料理ではあるが、日本のレストランで、『シタビラメのムニエル』と言えば、泣く子も黙る大定番メニュー。フレンチの食材だから、さぞかし、おしゃれな出で立ちかと思いきや、なんともシュールな容貌である。漢字で書くと「舌平目」。地方によっては「靴底」とも呼ばれる。どっちをにしても、なるほど納得だ。そんな見かけとは裏腹に、いやいや、そんな見かけだからこそ、味は実にトレビア~ン。
シタビラメを見ていると『ムーミン』が思い出される。『ムーミン』に魚の出番が与えられたなら、シタビラメをぜひ推したい。造作的にピタリとハマるキャラだと思うが、どうだろう?あの謎の生物ニョロニョロにもどことなく似ている。幼い子に「魚を描いてみて」と頼むと、ほぼシタビラメになりそうな気がする。魚をどんどんデフォルメしていくと、終いにはみんなシタビラメ。トビウオも羽を取ったらシタビラメ。シタビラメは魚界きってのアートなサカナなのだ。(多分に空想を含んでいます。)
チョウザメ
チョウザメ目
キャビアの母
高級な食材も、背伸びをすれば届きそう。商業の変容が食文化を大衆化しつつあるが、キャビアには当てはまらない。いかにも高そうなあの瓶詰めキャビアは、中身はせいぜいスプーン3杯ほどか。あっ!購入歴ものないのにすみません。あくまでも想像です。キャビアとはチョウザメの卵。卵が有名な分、その割を食っているのがチョウザメ本人。サメでもないのにサメと呼ばれ、さぞかし不本意であろう。ところがどっこい、「私、キャビアの母ですよ」と、チョウザメマザーは、ご満悦な様子だ。
チョウザメの顔は、魚というよりはむしろ哺乳類。鼻が上を向いていて、豚顔だ。孫悟空に海編があるならば、猪八戒はチョウザメに任せたい。そのルックスとは裏腹に、チョウザメの卵は世界3大珍味ひとつ、あのキャビア様だ。一方、トビウオの卵はトビコ。魚卵界ではともに知名度を争うライバルだが、値段を比較すると、キャビアはトビコの数十倍にもなる。回転寿司では決して回ってこない。果たしてスプーン一杯のキャビアは、寿司食べ放題の幸せに、勝てるだろうか。(多分に空想を含んでいます。)
タチウオ
スズキ目
タッチ
『秋刀魚』と書いてサンマと読む。このサンマを短刀とするならば、タチウオは堂々の日本刀。『太刀魚』と漢字にすると、妙に横綱感が漂ってくる。シルバーに輝く体表はまさしく名刀の佇まい。実はこのタチウオには鱗がない。体表を保護する鱗がない代わりに、グアニンという色素が体を保護している。ただ、この色素はとても剥がれやすい。「メッキが剥がれるとはお主、名刀どころか偽物だったか」。なんて野暮なことは言わずに、頂いてみてはどうかな。身は柔らかく、まことに美味である。魚屋では切り身で売られることが多いが、まさか1mを超える見事な体格の持ち主だとはとても想像できない。「長過ぎるから切り身になるのさ」。なんて野暮なことは言わずに召し上がれ。
『太刀魚』の別名は『立ち魚』。実際にタチウオは長い背鰭をヒラヒラさせて、ほぼ直立状態で泳ぐのだ。ならば、タチウオとトビウオは、名称的にはかなりの近縁だ。世間では「名は体を表す」とよく言われるが、この両者の名前は「名は動を表す」の際たるものだ。立つから『立ち魚』、飛ぶから『飛び魚』。tachiuoとtobiuo、不思議なものだ。ローマ字表記にしてもよく似ている。(多分に空想を含んでいます。)
ホンソメワケベラ
スズキ目 ベラ科
コンソメ
ミラーテストってなーに?少なくてもバックミラーの角度を直すこととは違う。ここでのミラーテストとは、動物が鏡を見て、自己認識できるかどうかを判定するテストのことだ。一般に、賢いとされるチンパンジーやゾウでも、際立った成績は残せなかった。さて、魚はどうなんだろう。そのテストに挑戦したのは、ホンソメワケベラ達。鏡に映った自分をほぼ全員が認識できたらしい。顔についた異物を取り払おうとしたのだから、これは間違いない。ホンソメワケベラは、サカナ界のアインシュタインだ。
ホンソメワケベラは掃除魚としても有名だ。他の魚の皮膚についた寄生虫を食べる。掃除して欲しい魚たちが行列を作ると言うんだから、人気のラーメン店さながらだ。苦労せずに餌を手に入れるなんざ、さすが賢いね。ミラーテストに選ばれるだけのことはあったのだ。もし、トビウオがミラーテストを受けたなら、そりゃ、不合格だね。判定前に鏡に突っ込んで、目を回すから。(多分に空想を含んでいます。)
イカ
十腕形上目
イカニモ
イカの仲間は、小さなホタルイカから巨大なダイオウイカまで、サイズの振り幅が尋常ではない。中には相当な変わり者がいるだろうと半ば期待していたが、10本足に、三角形の胴体、みな基本形に忠実だ。ホタルイカをどんどん拡大していくとダイオウイカになる。おおむね、イカはイカなのである。日本は世界一のイカの消費国。世界のイカの半分を食べている。もはや「イカ様」なのである。あっ!これはイカン。誤解を招く発言でした。
日干しにしたトビウオは、アゴ出汁の名で知られている。一方、イカの日干しは種を問わず、スルメと呼ばれ、お酒のつまみの国民的大定番になっている。これではスルメイカびいきだと、他のイカ達には不満もあろうが、スルメはイカファミリーの人気の一端を担っている。居酒屋のメニューでよく見る「アタリメ」は、実はスルメのこと。縁起が良くないからと「当タリメ」になった。すでに江戸時代に使われていたらしい。粋な計らいだね。イカした奴もいたもんだ。(多分に空想を含んでいます。)
ゴンズイ
ナマズ目
権之助
世の中には、聞くより見た方が早い、という事がたくさんあるが、ゴンズイ玉は一見の価値がある。魚の中には群れを作るものが多い。ゴンズイの群れはひと固まりになり、少しずつ形を変えながら移動していく。密集度が半端ないので、まるで1匹の巨大アメーバのようだ。そして一気に散り去り、また集まって固まりになる。散り際は打ち上げ花火のように美しい。話すだけではこの興奮は伝えられない。私は繰り返したい。百聞は一見にしかず。ゴンズイ玉は一見の価値がある。
人間も群れる習性があるようだが、一人になりたい時も多々ある。ゴンズイはどうなのだろうか。1匹ぐらいはへそ曲がりがいそうなものだが、群れることで得る利益は大きい。狙われる確率が下がるのだ。へそが曲がっていてはすぐに食べられる。トビウオも海中ではもちろん、空中でも数匹で編隊を組む事がある。その勇姿はブルーインパルスのごとき、これまた一見の価値がある。(多分に空想を含んでいます。)
シシャモ
キュウリウオ目
モシモ
魚は全般に生臭い。魚好きは、そりゃそうだ。で、済ますこともできるが、魚嫌いは、それこそが敬遠する1番の理由かもしれない。ところが、キュウリっぽい匂いがする一群が存在する。その名もキュウリウオ目に属する魚たちだ。シシャモはその中に入る。アユやワカサギもその仲間だ。確かに植物系の匂いがする。シシャモによく似た魚に、本家キュウリウオがいる。もちろんキュウリウオ目に属する。こちらに至ってはもう爽やかな香りらしい。ところがどっこい、今度はキュウリ嫌いが食べれない。どっちにしろ、魚に匂いは付き物。うまく付き合いたいものだ。
シシャモはアイヌ語である。北海道の太平洋岸でしか捕れない、希少なご当地魚である。最近は漁獲量の減少に歯止めがかからない。やはり海水温の上昇が一因だと思われる。実際、スーパーに並ぶシシャモの干物は、輸入のカラフトシシャモであることが多い。日本近海の多くの魚は、軒並み不漁が続いている。トビウオも然りである。近年アゴ出汁人気で需要が増えているトビウオだけに、この不漁は痛い。トビウオの名前を拝借している身としては、気がかりである。さらにもう一つ気がかりなことがある。見かけるのは、ほとんどがメスの子持ちシシャモ。オスはどこに行った。(多分に空想を含んでいます。)
シーラカンス
シーラカンス目
シーラナイ
シーラカンスの歴史は、遡ること遠く3億年前に始まっている。まだ陸上に動物が存在していない時代だ。実はシーラカンスは、我々陸上動物の直接の祖先になっていたかもしれないのだ。彼らは体内に肺の痕跡を残している。魚はえら呼吸、肺呼吸は陸上動物特有のもの。海の浅瀬まで進出して、陸に這い上がる準備をしていたのではないか。しかしシーラカンスは、海に戻ろう。と心変わり。逆に、海の底へ底へと進んで行き、とうとう 深海魚になったしまった。そして、20世紀に入るまで発見されず「生きた化石」と呼ばれるに至っている。
シーラカンスが陸上進出を諦めたのはなぜだろう?おそらく、ライバル魚との先陣争いに負けたからではないだろうか。争いに疲れたシーラカンスは海の底に居を構え、思考も行動も哲学的になっていった。「シーラカンス」はギリシャ語。なるほど、ソクラテス然とした顔立ちだ。以上真偽はさておき、海底に暮らすシーラカンスは重力に適応した魚だと言える。対して、海上を飛ぶトビウオは重力に抵抗した魚と言える。海底と海上、絶対に遭遇しない2匹なのだ。こちらの真偽はさておく必要はないと思うが。(多分に空想を含んでいます。)
スズキ
スズキ目
お向かいの鈴木さーん
日本で一番多い姓は鈴木さん。魚類で最も種類が多いグループはスズキ目。相関性はあるのだろうか。今のところ分かっていないが、今後も分からないだろう。お馴染みのタイやサバ、マグロはスズキ目の仲間で、魚屋さんの常連さん。一方、本家本元のスズキはあまり見かけない。何となく察しが付いた。スズキは暴れん坊で、網に掛かるどころか、網を突破してしまうのではないかな。熟練の釣り人からも一目置かれるファイターなのだ。
ところでスズキの名前の由来は?身がすすいで洗ったようなきれいな白色だから。なるほど「すすぎ」が「スズキ」になったようだ。名前の由来は、鈴木さんとは関係がなかった。家庭の食卓にはあまり並ばないスズキだが、そう言えばトビウオも並ばない。こちらの相関性には察しが付いた。スズキはファイター、トビウオはアスリート。簡単には捕まりませんよ。(多分に空想を含んでいます。)
ウナギ
ウナギ目
ウナジュウ
店先からこの匂いが漂ってきたら、もう平常心が保てない。急いで記念日を探そう。何かしら記念日を探し当てたら、今日はウナギにたどり着ける。ウナギの焼ける香ばしい匂いに、心奪われる人は少なくないはずだ。そのウナギが姿を消す日が来るかもしれない。代表種であるニホンウナギが絶滅の危機に瀕している。養殖ウナギでもいいや、なんて髙を括っている場合じゃありませんよ。その養殖すら危ういらしい。我が家のアニバーサリーの危機でもある。
ウナギは降河回遊魚と呼ばれる。海で生まれ、川に上り、産卵のために海に戻っていく。何でそんな面倒な人生を選んだの。ウナギは人智が及ばない謎の生態を持った魚なのである。養殖もかなり難しい。現時点では天然の幼魚を育てる方法しかないらしい。そう言えば、トビウオの養殖も聞いたことがないが、容易に想像が付く。トビウオは囲いを超えて飛んで行っちゃうし、天井を付ければ、ぶつかって目を回す。養殖どころの話ではない。(多分に空想を含んでいます。)